「陰陽(いんよう)」について語ると言いつつ、いつものように前段で足踏みをしています。
老子によって「道(みち)」と字(あざな)された、万物の生成活動はどう営まれているのでしょうか。
ここでは4つのフェーズとして、樹木の生長になぞらえてまずは纏めてみます。
- 発生・・・春に芽吹く
- 成長(生長)・・・陽光が強くなるにつれて、枝が伸長し葉が繁り、幹が強く太くなる
- 収斂・・・果実を結ぶ、葉が落ちる
- 閉蔵・・・体内に次の生長に向けてのエネルギィを備蓄する
樹木は、芽吹き繁茂する活動、すなわち「陽」と名付けるべき活動と、来るべき春に備えて活力を蓄える活動、すなわち「陰」と名付けるべき活動、そのふたつの活動によって、成長しているといえます。
老子は万物の生成活動をこうあらわしています。
道は一を生じ、一は二を生じ、三は万物を生ず。万物は陰を負いて陽を抱き、冲気(ちゅうき)以て和を為す。 (『道徳経』第42章)
上住節子によれば、「一」は「道」そのもの。「二」は「陰」と「陽」のことで、「道」の活動の二側面を名付けたもの。「三」は「陰」「陽」それぞれの活動が和合して、別の新しい活動が生まれるということ。
ここにある「冲気」とは何か。「冲」は「沖」の別体(異体)で、「虚しくする」「和らぐ」「ととのう」といったような意味があります。「冲気」とは「気を和ませること」あるいは「無私になること」と言っていいかもしれません。
ポイントなのは、老子が「陽」という活動よりも「陰」を重要視していることです。前述の樹木の話で言えば、養分を備蓄する活動があってはじめて生長することができる、陰があってこその陽である、という点であるということです。
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