九州出張が終わって、昨夜遅くにぐったりして帰宅する。今日は在宅勤務。出張の残務処理が中心になる。
村上春樹の短編「夏帆」(加筆改訂版)を読む。この短編のオリジナルバージョンは「新潮」2024年6月号に発表され、早稲田大学で本人が朗読したものだ(朗読のほうが先だったかな)。加筆改訂版は文字通りそのオリジナルをリヴァイスしたもの。
オリジナルバージョンと加筆改訂版とのあいだに、村上は「武蔵境のありくい」という中編(130枚)を同じく「新潮」(2025年5月号)で発表している。「武蔵境~」は「夏帆」の続編といっていい作品だ。今回の加筆改訂版「夏帆」は「武蔵境~」との〈接続〉をより明確にするかのように「アリクイ」「ジャガー」といったキーワードが見てとれる。オリジナルバージョンを書いたときには明らかではなかった〈テーマ性〉みたいなものが「武蔵境~」を書き終えた後に見えてきたということなんだろうか。
そして彼女は反射的に、実物のアリクイの姿を思い浮かべた。またく無関係な事物に目を向けることで少しの間でもいいから、今ここにある奇妙な現実から身を引くために。彼女が思い浮かべたのは黒くて大きな雌のアリクイだった(しかし、どうしてそれが雌だと私に解るのだろう?)。アリクイも顔を上げ、その大きな黒い目で彼女の方を見やった。その瞳には明らかに好奇の色が浮かんでいた。あなたはこんなところでなにをしているの?
私はここでいったい何をしているのだろう、と夏帆は思った。
この短編と中編「武蔵境~」の先にはおそらく新しい長編があるに違いない。楽しみ楽しみ。
『失われた時を求めて』は、47ページまで。出張に持って行ったのは光文社古典新訳文庫のKindle版。荷物を軽くしたかったので、岩波文庫版でなくiPhoneで読めるバージョンにした。訳は当然違うが、まあ訳が違うことで混乱することはないし。でも高遠訳はちょっと硬い印象。
