ラ・ロシュフコー『箴言集』を手にしてみました。既訳は多いですが、今回は武藤剛史訳の講談社学術文庫版。本訳はこの文庫のために訳し降ろされた。冒頭の「訳者まえがき」は押さえておいた方がいいです。
そもそも、ラ・ロシュフコーって、誰よ?
ってな向きも多いと思います。この本のタイトルは聞いたことがあるし、ラ・ロシュフコーの名前も覚えがあるかもしれないが、いったいどんな人物だったのかというとそう簡単には答えられないのではないか。かく言うわたしも他人のことは言えない。
彼はもともとフランスの名門貴族、いいとこのお坊ちゃんだ。時代で言えば、ルイ13世、14世のあたり人である。時のフランス宰相はリシュリューであり、マザランとともに宮廷で絶対権力を握っていた。ラ・ロシュフコーが40歳くらいまでは、彼ら相手に戦いと陰謀に明け暮れていた。
政敵マザランに完敗した彼は(フロンドの乱)、それをきっかけに〈サロン的生活〉をはじめる。いわば隠居暮らしである。波瀾万丈の自らの回顧録を執筆し、知り合いのサロンで多くの文化人と知り合うようになる。あの『クレーヴの奥方』を書いたラファイエット夫人と知り合うのもサロンを通じてである。つか、人生の前半と後半とでこんなに色合いの違う生き方をしたのか、この人。
本人の人生が波乱に満ちていると、その作品を純粋に評価するのは読み手にとっては案外厄介だが、そこを離れてこの本を捲ればまあ耳の痛いことばかり。こういう断簡零墨は通して読むというよりは、トイレあたりに置いておいて用の足しのつにいでパラパラ捲ればよい(別に見下しているわけでも何でもなく)。
今夜は、大学のスクーリングの国際政治論の最終講義で、テーマは「移民・難民」でしたが、ちょっと衝撃的なことを知って、改めて自分の無智ぶりに愕然としました。

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