1961年の「岩波文庫100冊」リストでは、スタンダールの作品から『赤と黒』が選ばれていましたが、ちょっと考えてここは彼がイタリアの古い古文書から着想を得て描いた短編集『イタリア年代記』の中から『カストロの尼』を読んでみました。
「16世紀イタリアを舞台に、身分違いの恋、裏切り、そして宗教的な背徳が絡み合う、濃密な愛の悲劇を紐解きます」ということですが、ウェルメイドなエンタメ、というのが印象です。スタンダールが提唱した「結晶作用(相手を美化し、恋にのめり込む心理)」が、これでもかと詰め込まれています。
名門コロンナ家の令嬢エレナは、家柄も富も持たないが勇敢な山賊の首領ジュリオと恋に落ちます。しかし、二人の恋は周囲に許されるはずもなく、過酷な運命によって引き裂かれてしまいます(エレナのお父ちゃんが最後まで反対していたのよね)。
数年の時が流れ、ジュリオが死んだと思い込んだエレナは、カストロの修道院の院長(尼)となります。しかし、そこで彼女を待っていたのは、死んだはずのジュリオとの再会、そしてさらなる破滅への道でありました。
つーか、エレナのお母ちゃんが〈策士〉なのですよ。ダンナが病気で臥せっているのをいいことに、まあ権謀術数を繰り出すわけですが、ひとえに我が娘愛しの一途な子思い。しかし、それが悲劇を生んでしまう。「いい加減さっさと子離れしなはれ」というのがこの話の教訓、というわけではないですが、成人した子どもにいつまでも付き纏うのはお互いのためにはなりません(笑)。
この話、うまく翻案できたら面白くなりそうです。単なる修道院がこれほど堅牢強固だとは。
