蝉の死骸が多く見られるようになった。今日あたりはフェーン現象もあってまだまだ暑いが、見えなくとも季節は変わっている。
■
タイトルは知っているけれど、読んだことない本というのはホントに多くて、この『五輪書』(「ごりんのしょ」と読む)もそのなかの一冊ではある。
このブログのメインタイトルも、僭越ながらこの本からとらせてもらった。
岩波文庫の青帯では、この本には校注こそ施してあれどもそのまま読み通すのはしんどいので、鎌田茂雄訳注の『五輪書』(講談社学術文庫)で現代語訳をざっくりと読んでいった。
武蔵は理にかなったことしかしなかった。合理的に利害と損得をわきまえたのであった。そしてそれは一見、実利主義そのものに見えるが、しかしこの実利主義は実は「斬る」ことに徹する実利なのであった。
武蔵は〈勝つ〉という一点を合理的に追求していったのであり、ここで鎌田は『五輪書』中「水の巻」からこう引いている(現代仮名遣いは引用者による)。
先ず太刀をとっては、いずれにしてなりとも、敵をきるという心也。若し敵のきる太刀を受くる、はる、あたる、ねばる、さわるなどという事あれども、みな敵をきる縁なりと心得べし。
構成は、地・水・火・風・空の5巻から成っているが、素人にも面白いのはやはり〈火の巻〉だろうか。二天一流の具体的な技が出てくる章で、〈鼠頭午首〉もここにある。単なる剣技を超えた汎用性のあるような記述もあるので、このあたりが「『五輪書』がビジネスにも通じる」といったような見方もされる所以なんだろう。ビジネスなんぞに阿らずに、松岡正剛のレビューを味読してもらったほうがいい。
0443夜 『五輪書』 宮本武蔵 − 松岡正剛の千夜千冊 (isis.ne.jp)
わたしとしては松岡正剛の一文くらいがちょうどよくて、講談社学術文庫では訳注者の解説が煩く感じられてしまう。訳注についてはいろいろとツッコミたいところはあるが、その思いあまって、というところだろう。