世界教養全集
かつて平凡社から「世界教養全集」なるシリーズが刊行されていた。もう60年以上も前だ。
そのシリーズを読んでみようかという〈野望〉である。しかし、60年前の翻訳をそのまま手に取るのはどうも曲がない。せっかくなので新訳が出ているのであればそちらを採用していこうと思う。
『箴言集』(第2巻-2)
初回は第2巻目に所収されている、ラ・ロシュフコー『箴言集』だ。第2巻目のラインナップはこちら。
・「随想録」 ミッシェル・ド・モンテーニュ
・「箴言と省察」 ラ・ロシュフコー
・「パンセ」 ブレーズ・パスカル
・「覚書と随想」 サント・ブーヴ
教養全集版の訳者は市原豊太と平岡昇。今回は武藤剛史訳の講談社学術文庫を手にしてみた。本訳はこの文庫のために訳し降ろされた。冒頭の「訳者まえがき」は押さえておいた方がいい。
そもそも、ラ・ロシュフコーって、誰よ?
ってな向きも多いと思う。この本のタイトルは聞いたことがあるし、ラ・ロシュフコーの名前も覚えがあるかもしれないが、いったいどんな人物だったのかというとそう簡単には答えられないのではないか。
彼はもともとフランスの名門貴族、いいとこのお坊ちゃんだ。時代で言えば、ルイ13世、14世のあたり人である。時のフランス宰相はリシュリューであり、マザランとともに宮廷で絶対権力を握っていた。ラ・ロシュフコーが40歳くらいまでは、彼ら相手に戦いと陰謀に明け暮れていた。
政敵マザランに完敗した彼は(フロンドの乱)、それをきっかけに〈サロン的生活〉をはじめる。波瀾万丈の自らの回顧録を執筆し、知り合いのサロンで多くの文化人と知り合うようになる。あの『クレーヴの奥方』を書いたラファイエット夫人と知り合うのも、サロンを通じてである。つか、人生の前半と後半とでこんなに色合いの違う生き方をしたのか。
本人の人生が波乱に満ちていると、その作品を純粋に評価するのは厄介だが、この本を捲ればまあ耳の痛いことばかり。こういう断簡零墨は通して読むというよりは、トイレあたりに置いておいて、用の足しのつにいでパラパラ捲ればよい。今夜はベイスターズの試合を観つつ、文字面を追っている。

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